複合環境試験装置の御案内

更新日: 2024年3月25日
 

電子応用技術開発班

複合環境試験装置は,振動試験装置と複合環境試験用恒温恒湿槽で構成されています。

振動試験装置+複合環境試験用恒温恒湿槽の写真
複合環境試験装置の外観
左:複合環境試験用恒温恒湿槽 右:振動試験装置

実施可能な試験の種類

  • 正弦波振動試験
  • ランダム振動試験
  • 衝撃試験:正弦半波,のこぎり波,台形波,(サインビート合成波、SRS合成波)
  • 複合環境試験(サインオンランダム・ランダムオンランダムも可能。温度上限:150℃。水平加振も可能。)

装置の仕様

表1 振動試験装置の仕様

項目 内容
形式F-350000BDHH/SLS36MS
メーカーエミック株式会社
定格加振力35.0kN(サイン)
28.0kNrms(ランダム)
100.0kN0-p(ショック)
振動数(振動発生器単体)5〜2,000Hz
定格最大速度2.0m/s(サイン・ランダム)
3.6m/s(ショック)
定格最大変位60mmp-p(サイン・ランダム)
100mmp-p(ショック)
最大加速度833.3m/s2(サイン)
666.7m/s2(ランダム)
980.0m/s2(ショック)
最大積載質量300kg(垂直)
500kg(水平)
治具・振動台の質量も含みます。
振動軸方向垂直方向/水平方向切換可能
加速度観測チャンネル数:8
垂直・水平振動台内蔵ピックアップで2ch使用済み
小型1軸センサー3個・3軸センサー2個・1軸センサー2個を用意しています。
使用可能最高温度:150℃

表2:複合環境試験用恒温恒湿槽の仕様

項目 内容
形式VC-102DAMYS(33S)P3T H/V
メーカーエミック株式会社
設定可能範囲-40〜+200℃/30〜98%RH 図-1 『温度湿度調整可能範囲』 参照
複合環境試験実施時の温度上限:150℃(加速度センサーの許容温度上限による制限)
温度・湿度変動幅±0.5℃/±3.0%RH
温度分布精度±1.0℃(-40℃〜+100℃) ±2.0℃(+101℃〜+200℃)
湿度分布精度±5%RH
昇温時間+20℃〜+150℃ 90分以内(負荷:アルミニウム50kg)
降温時間+20℃〜-40℃ 60分以内(負荷:アルミニウム50kg)
内寸法W1000×H1000×D1000mm 
複合環境試験の際,垂直補助振動台上面は底面+200mmの位置にあるため実効高さは800mmとなります。
通線口背面に直径50mmの通線口が3つあり,制御線/電源線などを通すことができます。
温湿度調整可能範囲を示す図
図ー1温度湿度調整可能範囲

試験の実施可否の判断

  • 以下の要件をすべて満たす必要があります。詳細はご相談下さい
    1. 総重量(供試品+お客様の取り付け治具+垂直補助振動台)は,300kg以下(水平振動台の場合は500kg以下)
    2. 変位振幅,速度が最大定格の70%を超えない
    3. 後述する要件を満たす供試品取付け治具の準備
    4. 振動数が補助振動台(表3)の範囲内
    5. 必要な加振力が装置の最大加振力の70%未満
      • 正弦波振動試験:(供試品重量+治具重量+振動テーブル重量)[kg]=総重量<最大許容重量=35000[N]/試験の最大加速度[m/s²]×0.7
      • ランダム波振動試験:目標のパワースペクトル密度と供試品の固有振動数を考慮して判断します。
    6. 供試品と治具の重心のずれによる偏心モーメントが許容値の範囲内
    7. 運転制御と機器保全に支障がない
      • 運転支障例:供試品の一部が可動⇒可動部の衝突による衝撃が発生⇒加速度観測に支障あり。
      • 機器保全支障例:NAS3350 ねじの緩み評価試験⇒衝撃により装置内のボルトが緩み故障原因となる
    8. 治具および供試品が補助振動台の取付面の範囲内にある(はみ出していない)
    9. 有人監視をお願いします。供試品の異常発生時には加振を停止していただきます。
      • 供試品の破損モードを想定し危険が無いと判断された長時間の試験については無人運転を認める場合があります。
    10. 試験中の供試品に通電動作させる場合の追加条件
      • 常時,有人監視を行い供試品の異常発生時には加振を停止し,供試品への電源供給を切断していただきます
      • 供試品が無通電状態で通電試験と同等の加振条件の振動試験によって,供試品に部品の脱落などの破損が起きない事が実証されている場合に限り無人運転を認める場合があります。
      • 供試品の電気回路に故障(ショート,断線,漏電)が発生した際に可動部に触らずに自動的に供試品の電源を遮断できる安全装置を用意していただきます。
      • 加振中の供試品動作確認のために供試品に触れる操作はできません。
    11. 複合環境試験の追加条件
      • 供試品等が恒温槽内面に接触する恐れのない十分な離隔距離が治具および供試品と恒温槽内面間にある
      • 温度・湿度条件が性能範囲内である
      • タイムシグナルにより供試品の電源ON/OFF切替をするための回路はご用意ください。回路仕様についてはご相談下さい。

表3:振動テーブルとサイコロ治具の質量および上限周波数

名称質量(可動部含む)[kg]上限周波数
垂直補助振動台117.0500Hz(サイン)
1000Hz(ランダム)
小型垂直補助振動台75.02000Hz(サイン/ランダム)
水平振動テーブル152.01700Hz(サイン)
2000Hz(ランダム)
サイコロ治具562000Hz(サイン/ランダム)
サイコロ治具用アダプタプレート1.8kg/枚

安全の確保

  1. 前述の「試験の実施可否の判断」に示す項目をすべて満たして下さい。
  2. 治具または供試品に破損が発生あるいは,共振振動数や共振応答倍率の低下,激しい挙動,音の変化などの破損の兆候が表れた際には運転を中止します。
  3. 85dB以上の騒音が発生します。聴力保護のため耳栓やイヤーマフなどの保護具を御用意ください。(労働安全衛生規則)
  4. 高所作業(床面2m以上)に必要な足場(労働安全衛生規則)を設置するスペースが無いため高所作業が必要な試験は出来ません。
  5. 垂直補助振動台に搭載し玉掛け作業やセンサー取付作業が可能な供試品高さ上限は,個人差がありますが800~1000mm程度です。それ以上高さのある供試品の上部には手が届きません。
  6. クレーンによるつり上げが必要(20kgを超える場合)な供試品や治具には上部にアイボルトをご用意ください。
  7. 段取りなどに要する時間に余裕のない計画でのご利用はお断りします。

供試品取り付け治具の要件

供試品を補助振動台に固定するための取り付け治具が必要です。治具は供試品の仕様に合わせて製作する必要があるため,お客様に御用意いただきます。

  1. 平面の確保:  補助振動台に接する面は完全な平面であることが必要です。平面が出ていない治具の使用は補助振動台破壊の原因となるため固くお断りします。
  2. 剛性の確保:  剛性が不足する場合,治具の部位によって加速度が不均一となり正しい試験が実施できないだけでなく,場合によっては大変危険です。供試品に比べて治具の剛性が同程度以下の場合,適正な振動試験と考える事ができなくなります。立体的構造を持つ治具は難しくなりますので,単純な構造をお奨めします。
  3. 共振振動数:  試験振動数範囲内で治具の共振を避ける必要があります。共振振動数を上げるには,小型化,強度と剛性の確保が必要です。治具を装置に固定するボルトの間隔を短くする(ボルトの本数を増やす。)事も効果があります。CADソフトによっては固有振動数を求める機能があるのでお試しください。
  4. 軽量化:    治具の重量が大きいと加振力が不足して試験が難しくなるため,より軽量にするべきです。アルミニウム合金の使用をお奨めします。アルミニウムは振動減衰能が高く共振応答倍率を下げる効果があります。
  5. 補助振動台〜取り付け治具〜供試品を締結するボルト
    • ボルトは消耗品です。お客様にご用意いただきます。
    • 補助振動台〜取り付け治具〜供試品を締結するボルトは,加わる力を正確に把握して強度を確保できる本数を使用する必要があります。ボルト本数は多い方が有利です。固定ボルトの本数の増加によりボルト間の距離が小さくなり,治具の共振を抑える効果も期待できます。
    • 治具と補助振動台間の固定は,強度区分12.9のM10六角穴付きボルトを用いて60Nmのトルクで固定していただきます。強度区分が不明なボルトは折損事故例があるため使用を禁止しています。
    • 供試品と治具間の固定は,供試品の仕様にあわせて選択していただきます。
    • 六角穴付きボルト以外のボルトではレンチを操作する空間が得られず固定できない場合がありますので,六角穴付きボルトを使用して下さい。
    • 補助振動台のネジ穴はM10(深さ20mm)です。ボルトの長さはお客様の治具の厚さにより長さを決定していただきます。10mm程度ネジが入れば締結には充分です。
    • M10六角穴付きボルトは,ボルトヘッドまでねじが切られていないため,厚さの薄い部材を固定できませんので,ご注意下さい。
    • 補助振動台に治具を締結するボルトに対してネジ緩み止め剤(例:ロックタイト)の使用はお断りします。ボルト抜去の際にインサートが抜けるだけでなく,その後のボルト穴の使用に障害が残ります。
  6. 補助振動台,サイコロ治具の供試品固定用のボルトの配置:  表4のとおり
  7. 重心位置
    • 供試品と治具を合わせた構造体の重心が加振機の中心に揃えられるように治具を設計してください。重心のずれによって生じる偏心モーメントには許容値があり,これを超える場合は装置保護のため試験実施をお断りいたします。供試品取付け治具を補助振動台の中心に取りつけるためには,治具の各辺の長さは,100mm+α,300mm+α,500mm+α,700mm+αのいずれかとなります。ボルトの位置は中心から均等に50mm離れた100mm間隔でサイズはM10となっております。各辺のボルトを奇数本とすると,加振機の中心軸と治具の中心を揃えることができなくなります(50mmずれる)ので,御注意下さい。
    • 供試品および治具の重心の求め方
      • CADソフトによっては重心を求める機能がありますので利用してください。
      • 供試品と治具を締結した構造体の下にコロをいれバランスがとれる線上を調べます。コロの向きを変え同様にバランスをとり,1回目にバランスがとれた線の交点付近に重心があることが判ります。
      • クレーンでスリング1本で吊った時,スリングの延長線上に重心があります。吊る点を変えて同じ測定をおこない前者との交点が重心位置になります。
  8. 旧振動試験装置(アカシ製)の治具も使用出来るように,50mmずらしてM6のねじ穴も用意しておりますが,垂直補助テーブルでは,固定用のねじ穴と干渉するために中心部300mm四方の範囲にはM6のねじ穴がございません。そのため,この範囲にしか固定出来ない治具は使用できません。新たな固定用の穴を開けていただくか,治具を作り直す必要がございます。
  9. 参考資料:JISC60068-2-47 環境試験方法-電気・電子-第2-47部:動的試験での供試品の取付方法
  10. 不適当な治具の例
    • 厚さが2mm程度の鉄板を板金加工して製作した治具:数10Hzの振動数で共振を起こします。
    • サイコロ治具からはみ出す治具:はみ出し部分は自由振動となり供試品に加わる加速度が不均一となります。
  11. 技術相談:  ご予約いただく前の技術相談にて,治具の仕様についてお尋ねします。御相談は無料でお受けしておりますので,ご遠慮なくご相談下さい。

表4:治具の取付ボルト配置

名称治具取りつけ情報
垂直補助振動台図面PNG   図面
小型垂直補助振動台 図面 PNG   図面
水平補助振動台 図面 PNG   図面
サイコロ治具 図面 サイコロ治具 PNG 図面
アダプタプレート  PNG 図面
加振機ボルト配置 図面 (M12六角穴付ボルト強度区分12.9を用います。締付トルク90Nm)PNG 図面

利用方法研修・各種支援

  • 振動試験を安全かつ所期の目的を達成するためには,熟練,経験と知識が必要であるため,本装置を御利用いただく際には,装置の設定と操作,クレーン運転と玉掛作業についての有料の支援を御利用頂いております。所要時間はお客様の使用条件によって異なりますが,時間あたりの料金は以下のとおりです。
    • 研究員技術的支援手数料:1時間・支援職員1人につき:3,900円(時間外2割増)

使用手続き

  1. 機器開放事業または技術改善支援事業で御利用いただけます。試験分析事業(依頼試験)では御利用いただけません。
  2. 「施設等使用条件」のもと,御使用できます。
  3. 利用フロー
    1. 技術相談:ご希望の試験の内容(「ヒヤリングシート」の内容)や準備の状況についてお打合せを行ってください。
      • 機器使用前に,供試品のサイズ,重量,治具の詳細,加振条件(加速度,周波数,加振継続時間など下記ヒヤリングシートの内容)をおうかがいします。これらの事項についておわかりにならないお客様は試験の計画について,試験仕様の決定や治具の準備など事前に充分に御相談下さいますようお願いします。
      • ヒヤリングシート(950KB)
    2. 予約:使用したい施設,機器及び日程・利用時間の予約を行って下さい。治具や供試品の準備が不確実な場合はご予約をご遠慮下さい。
    3. 申請書(全て申請書は押印が必要です。)のご提出と料金のお支払いを済ませてからの御利用となります。
      1. 施設等開放事業の場合⇒ 施設等使用申請書・報告書(報告書への押印もお忘れないようお願いします。):記入例
      2. 技術改善支援事業の場合⇒ 研究員技術的支援依頼書記入例
      3. 料金を後納する場合⇒ 後納申請書(機器開放の延長の場合はさらに1通必要となります。予備の用意をお奨めします。):記入例
  4. 1時間あたりの機器使用料(時間外利用分は2割増)
    1. 振動試験装置:2,200円
    2. 複合環境試験用恒温恒湿槽:1,000円

当日必要品チェックリスト

  1. 供試品
  2. 供試品取付け治具(利用者様持ち込み)
  3. 申請書(すべて押印が必要です。)【再掲】
    1. 施設等開放事業の場合⇒ 施設等使用申請書・報告書(報告書への押印もお忘れないようお願いします。):記入例
    2. 技術改善支援事業の場合⇒ 研究員技術的支援依頼書記入例
    3. 料金を後納する場合⇒ 後納申請書(機器開放の延長の場合はさらに1通必要となります。予備の用意をお奨めします。):記入例
  4. 使用料納入に使用する宮城県収入証紙(構内の宮城県計量協会で購入可能です。)【料金後納の場合は証紙は不要で,後納申請書をご用意下さい。】
  5. ボルト:六角穴付きボルト(強度区分12.9)
    • :供試品取付け治具を補助振動台に固定するボルト:M10
    • 供試品を供試品取付け治具するボルト:供試品に適合するサイズ
  6. 養生テープ:供試品のケーブルなどを固定するため
  7. 瞬間接着剤,カプトンテープ:加速度センサーを接着固定する場合
  8. 聴力保護具:イヤーマフ,耳栓など
  9. 供試品の電源や動作環境および測定器,カメラなど(必要に応じて)

環境試験室BE-02の位置

環境試験室位置図
環境試験室と駐車スペースの位置図

機器の校正状況

  1. 間隔:1年(2月頃に校正)
  2. トレーサビリティ:確保されています。
  3. 項目:加速度,振動数,温度,湿度
  4. 備考:ご利用者様が用意する治具の剛性が不足する場合は,治具の部位により加速度が異なってしまいます。このような場合,加速度センサーの校正が取れていると言う事実だけで,その振動試験で供試品に印加された加速度が規格の許容する範囲内に入っていたかを保証することはできません。

お問い合わせ先

宮城県産業技術総合センター機械電子情報技術部電子応用技術開発班
E-mail:shindou@mit.pref.miyagi.jp  2開庁日経過しても返信が無い場合は、技術相談フォームからお問い合わせください。

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御相談・お問い合わせには喜んでお答えしておりますが,遠方から当センターの振動試験装置を御利用いただくには旅費や移動時間が必要となりまして,当センターまでおいでいただくのが最良とは思えない場合もございます。このような場合には,お問い合わせいただいた方の最寄りの都道府県の工業系公設試が振動試験装置を所有している場合は,そちらの連絡先を御紹介する事があります。各都道府県では私どものような工業系公設試験研究機関を整備しておりまして,振動試験装置などを所有しているところも少なくはありません。

【近県で振動試験装置を所有している公設試】