所長挨拶

更新日: 2022年4月1日
 

 日頃より地域企業の皆様には,宮城県産業技術総合センターを幅広くご活用頂きまして,誠にありがとうございます。また,弊所の様々な企業支援活動に対しまして多大なるご理解とご支援を賜り,厚く御礼を申し上げます。

 さて,出口が中々見えないコロナ禍が続く中,地域のモノづくり企業の皆様からは,取引先からの受注は比較的活況であるものの,①海外等から半導体や主要部品が入手困難につき,納期厳守のための苦肉の策として入手可能な代替部材を用いた緊急の再設計により対応している,②一部の部品は海外から国内製造を急に要求され,現物から図面を起こしてモノづくりをしている,③エネルギーや資材,人件費の高騰にも係わらず,競争力確保のため適正価格を提示できない等の声があり,コロナ禍をきっかけとした構造的な課題も顕著なことから,これまでの成功経験によるビジネス展開は困難となりつつあります。

 しかし,言うまでもありませんが,どの様なビジネス環境であっても,自社として独自のオンリーワンとなり得る強い基盤技術を保有し,これを時代の変化に合わせてフレキシブルにかつタイムリーに変えながら付加価値向上に繋げていくことが極めて重要となります。弊所では事業推進構想でも掲げている様に,常に地域企業の皆様に寄り添い,それぞれの状況に応じた技術支援により企業価値向上となることを目指し努めて参ります。

 特に今年度におきましては,アフターコロナも見据えつつ,地域企業の皆様の取り巻く状況を鑑み,弊所として以下の5点に注力して推進いたします。

 1つ目はEMCを主とした電子機器の総合評価推進です。

 昨年度,長年にわたり地域企業の皆様から特にご要望が高かった「10m法電波暗室」を地方創生拠点化整備事業(内閣府)とみやぎ発展税を活用して「EMC総合試験棟」として整備し,本年4月より既存の3m法電波暗室と共に供用開始いたしました。5月にはVCCI取得も予定しており,これらにより海外輸出にも不可欠なEMC規格に準拠した電子機器の電磁ノイズ対策評価が可能となります。特に評価機器としては車のEV化も見据え,車載機器の評価系に手厚く対応しております。さらに,EMC試験に加えて,振動試験や熱衝撃試験,恒温恒湿試験などの環境試験や,工業用X線CTなどの非破壊試験と組み合わせることにより,ニーズに応じた電子機器の総合的な評価も対応可能となります。

 EMC総合試験棟

 2つ目はモノづくり現場でのDX化推進です。

 今年度,本県では産業デジタル推進課を新設し,県内産業のデジタル化支援やデジタル人材育成を推進に努めておりますが,弊所においてもAI/IoT関連技術のモノづくり現場への普及に取り組みます。弊所で開発したIoT体験キットやAIシステムをベースに,各企業様で抱える課題解決を目指したカスタム支援を行うと共に,社内で関連技術を定着させるための人材育成にも取り組みます。

 「IoT・AIデモシステム展示コーナー」のご案内

 さらに,コロナ禍のために対面を伴わないデジタルデータを活用したモノづくりも進んでおりますが,昨年度に(対象物のサイズ,測定精度,使い勝手などが異なる)2種類のデジタイザを新規導入しており,現物から3Dデータを計測して図面を起こしてモノづくりを行う,リバースエンジニアリングにも迅速に対応いたします。また,デジタルデータならではの最適な3DCAD設計に関して,提案型設計人材の育成にも取り組みます。

 アーム式デジタイザ(ベクトロン)

 非接触画像光学式三次元デジタイザ(FLARE)

 3つ目は次世代放射光施設への技術的橋渡し推進です。

 放射光利用経験が少ない企業の皆様が,弊所職員のサポートのもと,実際に放射光を使ってその利用方法を学び,自社の製品開発等に活かすための可能性を探る「放射光トライアルユース」は今年度で4年目となりますが,今年度も支援内容をブラッシュアップした形で継続致します。さらに,放射光施設での計測に先立ち,両者の技術的橋渡し機器として高度分析機器4機種(①XPS,②XRM,③XRD(2D小角・広角散乱測定機能の追加), ④μ-XRF)を昨年度導入し,本年4月から正式稼働いたします。これらの機器は工業材料から食品まで幅広い業種に対応しており,活用方法をご紹介する「機器説明会」をWeb等も取り入れながら実施予定です。

 ①XPS

 ②XRM

 ③XRD(2D小角・広角散乱測定機能の追加)

 ④μ-XRF

 4つ目は事前検証に基づくモノづくり推進です。

 現在,DX化と相まってモノづくりの更なる効率化が求められており,その1つの解としてシミュレーションを活用した事前検証により,予備試作回数を極力低減したモノづくりが重要となります。弊所においては,このニーズに迅速対応するため,古いバージョンの商用シミュレーションソフトやPCを更新すると共に,汎用性の高いフリーソフトの効果的な利活用も推進し,地域企業の皆様が必要とされる案件に最適なソリューションを提供いたします。

 また,これらを戦略的に有効活用する際に不可欠となる地域企業の皆様の人材育成にも努めて参ります。

 シミュレーション関連事例

 流体解析技術高度化のための調査

 電磁界シミュレーション

 5つ目は科学に基づくモノづくり推進です。

 全ての業種に対して言えることですが,モノづくりを行う際に長年の経験に基づき取り組んでいる企業が多いと言う状況もあり,平時の際は問題とならなくても,特にトラブル発生や改良を含む新製品開発の際に,科学に基づく詳細な現象を把握していないために,その対応に想像以上の時間とコストを要し,トータルで考えると大きな損失となっている事例も少なくありません。この対策として,弊所内に整備された機器を適切に利用し,得られたデータから現象解明に繋がる最適解を得ることに努めると共に,必要に応じて放射光施設への技術的橋渡しも行って参ります。弊所では「○○を科学する」をモットーとしておりますので,例えば,昨年度更新したオートサンプラー付GC-MS/Oは工業製品のみならず,食品中の未知成分の定性・定量分析も可能となることから,食を科学する観点で食品設計にも対応いたします。現象解明などの際には,研究部門を持たない方々の研究室としても幅広く弊所をご利用いただければと思います。

 オートサンプラー付GC-MS/O

 なお,これらの推進に不可欠な基盤技術の高度化を目的として,今年度から新たに取り組む主なテーマとしましては,高度電子機械産業分野では「10m法電波暗室を用いた放射電磁ノイズの測定環境依存に関する調査研究」(令和4~5年度),「工業材料の加工プロセスと評価技術の確立」(令和4~6年度)や,食品製造分野では「県産清酒多様化のための酵母開発」,「多変量解析を活用した工程管理技術の検討」,「イチゴ「にこにこベリー」のケーキ用としての特性評価と利用拡大に向けた検討」(いずれも令和4~6年度)があり,この他に若手職員の人材育成も兼ねた将来の芽出しとなるテーマ探索のための「先端技術等調査研究事業(FS事業 5テーマ)」を今年度も継続して実施いたしますが,いずれも地域企業の皆様への成果普及や新たな技術サービスの提供を最終目標として取り組んで参ります。

 新型コロナウイルス感染防止対策として,弊所では,ご利用される皆様の安全確保のため, 所内の定期的な換気や消毒などを行うと共に,Web会議システムの活用により,来所を伴わなくても従前に近い企業支援や技術研修・セミナーの提供を継続しており,来所の時間を取れない緊急を要するご相談などにも有効にご活用頂ければと思います。

 また,皆様のご協力により,万一の感染発生の際に所内での来所者の動向を把握する来所者チェックシートの運用も継続しております。

 宮城県産業技術総合センターにおける新型コロナウイルス感染症拡大防止対策について

 今後とも,地域企業の皆様からより一層信頼されるよう職員一丸となって地域産業のさらなる振興をめざして真摯に取り組んで参りますので,これまで以上に弊所を幅広くご活用頂きますようお願い申し上げます。

  令和4年4月

宮城県産業技術総合センター 所長  斎藤 雅弘