素材型デバイスを創造し、社会を支える~ 株式会社トーキン

更新日: 2026年10月13日
 

株式会社トーキンは、磁性材料、キャパシタ材料、セラミックスなどの素材開発から、それらを組み込んだ最終デバイス製品までを設計・製造するグローバル企業です。県内の優れた工業製品を表彰する「みやぎ優れMONO」を二度受賞しており、近年では大型放射光施設「NanoTerasu」や「SPring-8」、小惑星探査機「はやぶさ2」で使われている部品も手掛けています。今回の取材では、白石にある本社に訪問し、マグネティック・センサ&アクチュエータ事業本部の山内部長、近藤さん、中野さん、脇澤さん、千葉さん、池田さん、大崎さんに、自社の強みや産業技術総合センター(以下「センター」)の活用事例についてお話をお伺いしました。

大型実験施設から小惑星探査機まで

「当社は“素材革新をもとに、人と地球の豊かな調和と発展に貢献するグローバル企業”を経営理念として掲げています。歴史は、1938年に「東北金属工業」として発足したところから始まります。その後、トーキン(東トウ北金キン属より)と社名を変更し、現在はYAGEOグループの一員として、グローバルに事業を展開しています。」(近藤氏)

「当社の最大の強みは、磁性材料、キャパシタ材料、セラミックスなどの素材開発から、それらを組み込んだ最終デバイス製品までを一貫生産できる体制にあります。海外にも製造拠点があり、世界規模の広範な販売網を活用して製品を展開しています。この白石では主に各種デバイスの設計・開発を行っています。」(山内氏)

製品の仕様に合わせて設計された様々なインダクタ(コイル)。

トーキンでは電気・電子機器には欠かせないインダクタ(コイル)やキャパシタ(コンデンサ)、アクチュエータ※1などの部品のほか、フェライト材料や、カテーテルに使われているメモアロイⓇ※2などの素材開発も得意としているとのことです。また、その技術と品質が評価され、大型放射光施設「NanoTerasu」や「SPring-8」※3、小惑星探査機「はやぶさ2」にも同社の部品が採用されています。

「大型放射光施設「NanoTerasu」など、大型施設への納入は単発で製品を納めて終わりというものではありません。施設建設スケジュールや自社工場の製造能力に合わせて、数年がかりで順次納入を行う、長期的かつ大規模なプロジェクトです。」(山内氏)

NanoTerasuで採用されている部品のミニチュアモデル。
同社の磁石が小惑星探査機「はやぶさ2」のイオンエンジンの磁気回路に使われている。

「私たちの部署ではEMC(ノイズ対策部品)分野を手がけているのですが、業界全体として状況が変わってきています。過去であれば“電波ノイズが出たら対策する”という対応が多かったのですが、現在は“そもそも電波ノイズを抑えた設計にする”というやり方になってきています。(機器が小型化していくなかで)ある筐体のスペースの中に収めていくような設計にすることも肝ですね。」(中野氏)

電気・電子機器業界全体において、設計ノウハウの蓄積やシミュレーション技術の発展により、同社でもとめられる事も変化しているとのことです。

「当社独自の自社開発フェライト材料を活かしたカスタム設計の提案や、センターの研修・セミナーを活用し、従来の延長線上にはない新しい付加価値を持った製品やビジネスモデルの創出を模索しています。現在、会社の業績は非常に好調ですが、市場サイクルや技術変化が訪れる前の“業績が良い今のタイミング”で新しい可能性を見つけておくことが不可欠だと考えています。」(山内氏)

フェライト材を使った電波ノイズ抑制部品(EMIコア)。

※1 アクチュエータ:電気や空気圧などのエネルギーを物理的な「動き」に変換する駆動装置。
※2 メモアロイⓇ:同社が製造・販売するニッケル・チタン合金の名称。形状記憶や超弾性といった特性を持つ。
※3 大型放射光施設「NanoTerasu」や「SPring-8」:強力な光(放射光)を用いて、物質のミクロな構造や機能を調べる大型実験施設。

センターの「教育支援×機器利用」で効果を生み出す

「SOLIDWORKS※4の研修が役に立っています。3D-CADによる設計技術はコイルを収める筐体の設計などに活用しています。その他にも磁場解析をお願いしたこともありますし、接着剤の塗広がり・・・・・・・・のシミュレーションを吉川さん(シミュレーションを担当するセンター職員)に相談したこともあります。」(中野氏)

「センターの研修やセミナーは一歩目だけはなく、二歩目も踏み出せるような内容です。(白石から)場所がちょっと遠いことだけが難点ですが(笑)。以前、柴田さん(センターのデジタルエンジニアリングコーディネーター)に弊社まで来てもらってSOLIDWORKSのカスタム研修を三日間行ってもらったこともありますね。」(山内氏)

「実車に、私たちのノイズ対策部品を組み込んで、10m法電波暗室でノイズ低減効果のノイズ測定を行ったこともあります。実際に自社部品が組み付けられている状態を直接見て効果を検証できたことは、非常に貴重な体験となりました。」(池田氏)

「今度、EMC関連のセミナー(【回路設計セミナー】設計初期から実現するEMC対応と開発効率向上 ~シミュレーション活用による手戻り削減と最適設計~)がセンターでありますよね?私も参加しますし、部署のみんなも行きたがっています。」(中野氏)

センターでは様々な有料研修や無料セミナーだけでなく、各企業のニーズに合わせてプログラムを組み立てて実施する個別教育支援も行っています。同社では、そういった教育支援と、センターの機器を上手く組み合わせて活用し、実業務に役に立てて頂いています。

生成AIを活用した商品企画セミナーの様子。若手からベテラン社員まで参加している。
SOLIDWORKS研修の様子。実業務に活用できるスキルを学ぶ。

※4 SOLIDWORKS:工業分野で多く使われている3D-CADのひとつ。

今後のビジョンについて

「 研修で学んだSOLIDWORKSの技術を活かし、新しい設計や製品に一から取り組んでみたいです。」(大崎氏)

「 商品企画セミナーで出た抽象的なアイデアを、AIや市場データ分析を駆使して「具体的な製品ビジョン」へと落とし込んでいきたいです。未来の技術課題を予想し、正解のない問いに対してAIと共にアプローチしていきたいです。」(池田氏)

「 AIサーバーやEV、産業用ロボットなど、今後急成長する市場に向けて、既存製品のマイナーチェンジにとどまらない、付加価値の高い新商品を開発することが目標です。」(千葉氏)

「過去にできなかったことが今ならできる環境がある。付加価値の高い新商品を開発することが目標です。」(脇澤氏)

「グループや部門の垣根を超えて若い世代と共にアイデアを出し合い、他社が思いつかないようなコンセプトモデルや新領域の製品を世に送り出したいと考えています。」(中野氏)

「従来の延長線上の商品だけではつまらない。優秀なメンバーがそろってくれているので、一緒になって新たな商品企画に取り組んでいきたい。」(山内氏)

「AIを活用した業務効率化にも取り組みたい。センターにはいろいろなジャンルの人たちがいるので、アイデアの活性化も含めて相談・活用していきたい。」(近藤氏)

今回のインタビューには、入社1年目の若手社員から入社31年目のベテラン社員まで、多くの皆さんに参加に頂きました。センターの事業を上手く活用しながら、新たなチャレンジに取り組む姿勢を伺える取材となりました。

城下町として発展した白石に立地する。

注:秘密保持のため一部画像を加工しています。

取材日:2026年9月16日

会社概要

所在地[本社]〒989-0223 宮城県白石市旭町七丁目1番1号
連絡先https://www.tokin.com/contact/inquiry/
ウェブサイトhttps://www.tokin.com/
事業内容タンタルコンデンサ、電気二重層コンデンサ、インダクタ・トランス、ノイズ防止部品、 圧電デバイス、各種センサ