セラミックの「グリーン加工」で少量多品種生産~東北セラミック株式会社

更新日: 2023年4月3日
 

セラミックス製品の少量多品種生産を中核事業とする東北セラミック株式会社は1982年に亘理町に設立されました。セラミックス製の機構部品や半導体装置部品製造を中核事業に,金属の表面処理や金属複合部品の提供も行っています。同社は,創業当時の主力製品であった「ジルコニアるつぼ」の性能評価を産業技術総合センター(以下「センター」)で実施したことをきっかけに,長年センターを利用している企業のひとつです。

今回は,製造技術部技術課の山田係長と小松主任に,業務内容や自社製品の特徴,センターの活用事例などについてお話を伺いました。

セラミックス製品の少量多品種生産

「主力事業はセラミックス製品の少量多品種生産です。その中でも,セラミックの“グリーン加工”を得意としています。グリーン加工は焼結体を加工する方法と比較して,コスト面でメリットがあります。」(山田氏)

顧客の要望に応じて少量多品種のセラミックス製品を製造する同社は,グリーン体(未焼結の材料)を工作機械で切削・旋盤加工し,炉で焼結する「セラミックス製品のグリーン加工」に長けています。グリーン体は焼結すると収縮するため,予め収縮を予測して設計する難しさはありますが,低価格で製品を提供できるというメリットがあるとのことです。

「焼結収縮は一律に小さくなるのではなく,形状や成形工程によって違いが生じるため,焼結方法にも工夫が必要です。グリーン加工,焼結で完結するものもありますが,特に精密部品であれば焼結後に仕上げ加工が入ってきます。」(小松氏)

工場内にはグリーン加工や仕上げ加工をするマシニングセンターやNC旋盤,プロファイル研削盤などの工作機械の他,プレス機,焼結炉,三次元測定機などが並んでいて,顧客からのカスタムオーダー生産に対応する体制が整っています。取材日当日も工場内では忙しく様々な加工が行われていました。

グリーン体の精密加工を得意としている。
ドライ環境で加工後,焼結の工程に入る。
高さ数メートルの大型ガス焼結炉を備える。

「金属部品をセラミックス製品に置き換えることで,耐摩耗性・長寿命化・軽量化などの効果を得ることができます。」(山田氏)

「ジルコニアやアルミナの加工が多いですが,営業の人が積極的にいろいろな仕事を取ってきてくれるので,セラミックス製品以外の業務も行っています。」(小松氏)

「金属とセラミックの他,サファイヤやダイヤモンドを接着させた異種材接合部品も得意で,ケミカル接合部は±3µmの段差で接着するものもあります。」(山田氏)

同社の展示コーナーには,アルミナやジルコニアを主原料としたセラミックス製品や金属との異種材接合部品,自社製品などが並んでいます。

展示コーナーには様々なサンプルが並ぶ。写真中央は金属とセラミックの異種材接合部品。

産業技術総合センターの装置を幅広く活用する

「どの装置を一番つかっているかな…??(笑)パッと思いつくのは,CIP(冷間等方圧プレス)や高速引張圧縮試験機による3点曲げ(物性を検査する試験)とか。ちょっと前には3D超音波検査装置でサンプルピースの内部欠陥を調べて,加工用の材料を作るためのプレスの圧力を最適化しました。家口さん(精密測定分野担当のセンター職員)に装置の使い方を手取り足取り教えてもらったり,氏家さん(材料分野担当のセンター職員)にもよく相談にのってもらっています。」(山田氏)

山田さんや小松さんらが使用したことがあるセンターの装置は,上記の装置のほか波長分散型蛍光X線分析装置(WDXRF)非接触三次元測定機など15機種を超え,主に製品の材料分析や物性評価,精度測定などに活用しています。

「顧客のニーズに合わせたオーダーメイド加工を行っているので,センターの装置を使ってデータを取れるのはとても役に立ちます。プレスや焼結の条件を変えると物性も変わるので,サンプルピースを作って最適な条件を見つけます。」(小松氏)

工場内に並ぶ焼結炉。生産にはもちろん,サンプルピース作製などの実験用途にも使われる。

自社工場でも大活躍する自社製品

「自社商品の“サンセラ”は格子構造の焼成用セッターです。通気性が高いのでバインダー抜けが良く,ソリの予防効果もあります。自分たちも工場で使っています。」(山田氏)

サンセラはセラミック製の焼成用セッター(焼成用の容器・台)で,MIM(金属射出成形)の脱脂・焼結の工程,超硬材の焼結,液晶ターゲット材の製造工程などにも使われている同社のロングセラー商品です。使い勝手が良いので自社工場でもたくさん使われているとのことでした。

「顧客からのオーダーに合わせて,いろいろな形状のサンセラを提供できます。」(小松氏)

インタビュー終了後,工場見学に行くと,ちょうどカスタムサイズのサンセラを組み立ていました。自分たち自身が製造工程に使うほど便利な商品なので,日本全国の製造現場から引き合いがあるようです。

焼成用セッター「サンセラ」。工場内にはたくさんのサンセラが並んでいた。
カスタムサイズのサンセラを組み立てている様子。

今後のビジョンやセンターに期待すること

「新規事業として燃料電池セルの共同開発や,セキュリティ・医療分野等で使用されるシンチレータの製造にも力を入れています。私たちの社長,とてもアクティブなんです。」(山田氏)

セラミックス製品以外の分野でも,世界の技術動向を見定めながら積極的に挑戦していく企業姿勢がとても印象的です。

「顧客からの要望で製品の材料・機械的特性のデータを調べる必要が度々あります。そんなときにセンターの装置を使ったり職員の方々に相談にのってもらっていて,とても助けになっています。4月から新入社員が入ってくるので,センターの装置見学に行ってもいいですか?」(山田氏)

同社は,自社工場の設備とセンターの装置を上手く使い分け,顧客からの要望にスピーディー且つ的確に対応しています。今後も,センターでは幅広い分野で技術協力していきたいと思います。

※センターでは定期的に「機器説明会」を実施している他,皆さまの要望に合わせて不定期に見学会を実施しています。ご希望の方はお問い合わせフォームよりご連絡下さい。

会社概要

所在地〒989-2351 宮城県亘理郡亘理町字江下111
お問合せお問合せフォーム
電話0223-34-6817
営業時間 8:30~17:30
ウェブサイトhttps://www.tohokuceramic.com/
代表者清野 嘉幸
主な事業セラミック製品の製造・販売