炭化ケイ素発熱体のパイオニア~東海高熱工業株式会社

更新日: 2023年8月24日
 

東海高熱工業株式会社は、セラミックス製品や工業炉の製造販売を主な事業としています。仙台工場は1964年に柴田町の現在の場所で製造を開始し、同工場では炭化ケイ素発熱体や抵抗器、ファインセラミックス部材を製造しています。

今回は、伊藤工場長、木村副工場長、現在産業技術総合センター(以下「センター」)を実際に利用いただいている技術課の中村氏、増田氏に、同社の事業や製品の特長、センターの活用などについてお話を伺いました。

炭化ケイ素発熱体のパイオニア

「会社の事業は、セラミックスの製造販売と工業炉関係の2つです。仙台工場では、セラミックスを扱っており、発熱体、抵抗器、SiCセラミックス高温材料であるリクライト(同社製品名)を製造しています。」(伊藤氏)

主力製品は、発熱体とのことです。この発熱体は工業用の電気炉の熱源として使用されており、同社の製品は炭化ケイ素(SiC)という材料でできているため1,000℃を超える高温でも使用可能です。積層セラミックコンデンサなどの電子部品、ガラス、リチウムイオン電池の製造などに使用されているそうです。

「板ガラス製造向け発熱体の国内シェアは90%程度あり、海外を含めてもシェアは高いです。また、リチウムイオン電池向けについては、今後伸ばしていく予定です。」(伊藤氏)

「SiC発熱体は、(同社が)国内で最初に市販した歴史があります。長年の経験と実績があり、高品質なだけでなく、お客様の要望に応じた提案ができるのも強みです。」(伊藤氏)

工場では、様々な形状や大きさの発熱体が製造されていました。製造には自社製造の工業炉も使用しているとのことでした。また、産業用ロボットや材料の自動計量設備も導入されており、省力化・効率化も考えられた工程になっています。

生産ラインの一部。材料の計量を自動化している。
丁寧に仕上げ加工を行う。
発熱体の熱処理工程。

「リクライトは、るつぼやガス吹込み管などいろいろな形のものを製造しています。決まった形はなく、フルオーダー。電子部品の高性能化につながる新しい製品も作り始めています。」(伊藤氏)

事業所内には工場のほかに研究室もあり、研究開発・製品開発も行われています。

実際に電気を流して品質チェックを行う。
炭化ケイ素発熱体は、1000℃以上まで発熱する。

産業技術総合センターの利用を通じて様々な知見を得る

「センターが泉区に移る前の長町時代から、よく利用していました。うちの製品はいろいろなものに取り付けて使われるので、振動試験機や環境試験機を利用して、使われる環境で性能が出ているかを確認したりしていました。通い詰めていた時期もありましたね(笑)。」(木村氏)

現在は、若手社員の方に分析装置をメインに利用いただいています。

「私は、2年ほど前から、研究や品質評価の業務で、自社設備では対応できないところをより詳細に分析するためにセンターを利用しています。FE-EPMA(電解放出型電子プローブマイクロアナライザ)を使った高倍率での観察やより詳細な分析を、センターの方に助言をいただきながら進めています。」(中村氏)

「実際に分析をしてみて知見を増やしていく、という形で利用させていただいています。」(中村氏)

センター担当者によると、相談される技術的な内容は高度なものなのだそうです。若い社員の方が精力的に取り組める環境があり、開発や製造で活躍していることが窺われます。

自社内の研究室では、多目的X線回折装置や走査型電子顕微鏡を活用して、さまざま開発が行われている。
テスト用のサンプルピース。

インフラを支える自社製品

「主要製品の一つである抵抗器は、セラミックでできており、数kVや数万Aといった強電分野で使われます。」(伊藤氏)

セラミックでできている抵抗器は、大きなエネルギーが入って温度が上がっても性能が落ちない特徴があり、変電所にある遮断器のような大電流の遮断や切り替えの際に必要となる機器の抵抗器として使われているそうです。

「インフラを支えているのが、この抵抗器なんです」(伊藤氏)

「高エネルギーを扱う放射光施設※1の電源保護抵抗としても使われています。筑波のフォトンファクトリーにも使われていて、“東海高熱工業”の名前が関連の論文にも掲載されているんですよ。」(木村氏)

※1 放射光と呼ばれる電磁波(X線など)を利用してさまざまな研究や製品開発に利用される実験施設。宮城県でも、令和6年4月の運用開始を予定して次世代放射光施設(ナノテラス)の整備が進められています。

出荷を待つ炭化ケイ素発熱体。
自社製品の抵抗器。

今後のビジョンやセンターに期待すること

「カーボンニュートラルやSDGsという中で、少しでもエネルギー消費を抑えて製造して、さらに、自社製品がエネルギー消費削減に貢献できるようにもしていきたいです。そのため、研究開発にも引き続き力を入れていきます。」(伊藤氏)

「カーボンニュートラルやSDGsに貢献できるような発熱体や省エネルギーで生産できる生産技術の開発ができればと思います。」(中村氏)

最後に、センターへの期待を伺いました。

「試してみたいことがあるときに詳しい方に相談※2できる状況があり、より良い提案をいただくなどもしている。今後もご協力いただきたいです。」(中村氏)

「会社の中で問題にぶつかることがあり、これまでの知識では越えられないことも中にはある。そういう場合に、違う視点からの助言などをいただけると若い社員が問題を乗り越える力になる。私が若いころには、よくセンターに電話して聞いていました(笑)。」(木村氏)

今後は成長分野向けの増産も視野に入れているという同社。研究開発・製品開発から製造まで、必要に応じてセンターを活用することで対応の幅を広げています。

※2 センターでは工業全般にわたる相談を随時受け付けており、各分野の職員が対応いたします。お問い合わせフォームよりお気軽にご相談ください。

工場見学の様子。エンジニアの方が専門的な内容を丁寧に説明してくれた。

会社概要

所在地(仙台工場)
〒989-1612 宮城県柴田郡柴田町中名生字佐野34-1
お問合せお問合せフォーム
電話0224-54-2427
ウェブサイトhttps://www.tokaikonetsu.co.jp/
代表者佐藤 明彦
主な事業・セラミックス製品(発熱体、抵抗器、SiCセラミックス高温材料)の製造、販売
・工業炉の製造、販売、エンジニアリング