デザインの力で「つくる」と「売る」を支援する~ブルーファーム株式会社 —

更新日: 2023年2月2日
 

宮城県大崎市にあるブルーファーム株式会社は,自らを「八百屋とデザイン事務所が融合した会社」と紹介しています。その言葉のとおり,同社の業務内容はグラフィックデザインにとどまらず,ブランディング,販売,卸,商品開発,スタイリングなど多岐にわたり,東北の食材をデザインの力で世界に広める仕事をしています。

今回,ブルーファーム株式会社の設立メンバーであり,デザイナー兼テクニカルディレクターの髙橋雄一郎氏に,同氏が講師を務めているデザイン研修(宮城県産業技術総合センター主催)の内容と,研修受講生と取り組んだ商品開発のことを中心にお話を伺いました。

実践的な内容を学ぶデザイン研修

「僕らが普段仕事の中で使っている商品開発の手法をぎゅっと圧縮したのが,この研修で学ぶ内容です。」(髙橋氏。以下同じ)

髙橋氏が講師を務めるデザイン研修では,商品開発の基本の一つ「マーケットイン手法※1」を,オリジナルのワークシートを使って短期間で効率よく学んでいきます。

「ワークシートを使い,“ペルソナ(具体的なユーザーターゲット像)”を徹底的に作り込んでいきます。それを商品開発に携わるメンバーで共有すると,商品開発のスピードがグッとアップするんです。」

本研修では,宮城の食材をテーマに,ペルソナ設定・分析,コンセプト作成,商品の最終イメージ立案まで,商品開発の一連のプロセスを体験しながら習得してきます。このプロセスはブルーファームの普段の業務の進め方をコンパクトに再現したもので,実践に近い内容で受講生が学習できるように工夫されています。

※1 マーケットイン手法:ユーザー視点で商品開発を進める手法。“ペルソナ”と呼ばれる架空のユーザー像を作り,その人のニーズに合う商品の開発を進めていく。

オンラインで研修を開催する様子。WEBツールを駆使し,まるで対面で受講しているような感覚で研修が進む。

「 僕も以前,マーケットイン手法研修に参加したことがあるんです。学んだ次の日から即仕事で実践しました。自分の武器が増えた!と感じました。」

ブルーファーム起業前,髙橋氏は仙台市内の広告代理店でインハウスデザイナーとして活躍していました。その時,当時のマーケットイン手法研修(センター主催/講師 武蔵野美術大学教授 宮島慎吾氏)に受講生として参加し,ペルソナを使ったマーケットイン手法を学びました。そこで習得した内容と,髙橋氏が商品開発を実践するなかで身につけてきた経験と知識が組み合わさって完成したのが現在開催されている研修です。

研修受講企業と商品開発をすすめる

研修を受講するだけがゴールではありません。最近では研修受講企業,髙橋氏,センターが協力して実際の商品開発に取り組む事例も増えてきています。ここでは,「豆腐バー」を開発した太子食品工業株式会社(以下,太子食品)と,ヴィーガン向けのふりかけとクッキーのブランド「MAI FRIENDS(マイフレンズ)」を運営する株式会社アキコーポレーション(以下,アキコーポレーション)の取り組み事例をご紹介します。

太子食品が開発した豆腐バーは,片手で食べられる棒状の豆腐で,なめらかな食感と植物性たんぱく質を手軽にとれることが特徴の商品です。同社の商品開発部のメンバーが研修に参加したことをきっかけに,センターの支援スキームを使って販売に向けた打ち合わせがはじまりました。

「豆腐バーの開発にもペルソナの手法を使っています。一人のペルソナを作ったんですが,設定資料が“絵巻”になるくらい細かく設定しました。(笑)」

髙橋氏はパッケージのデザインだけではなく,ペルソナ設定と分析,コンセプト立案などにも携わり,最終的な商品を商品開発部のメンバーと一緒になって作り上げました。完成した商品は2023年2月1日から販売がはじまります(一部店舗で先行販売中)。

「太子食品はいい意味で(豆腐の)エンジニア集団。素材にもこだわり,本質に迫った食品を作っていてファンも多い。そんな“太子の豆腐”のイメージをきっちりと(豆腐バーのデザインに)使うことを意識しました。」

左から麻婆豆腐味,ブラックペッパー味,かつおだし味の豆腐バー。

アキコーポレーションが運営するブランド「MAI FRIENDS」では,ヴィーガン向けのふりかけや米粉クッキーを販売しています。アキコーポレーションの代表が研修に参加したことをきっかけに,商品開発がはじまりました。

「ブルーファームで運営するローカルイノベーションスクール(地域プロデュースの手法を実践的に学ぶ場)に備えたキッチンでは,試作や小規模量産ができます。ふりかけとクッキーもここで作りました。ターゲットは“ヴィーガン”です。ヴィーガン向け食品の市場伸び率はとっても高いんですよ。」

“のなこ”と呼ばれる加熱しても色が落ちにくい野菜パウダーを使い,ふりかけと米粉クッキーをレシピから開発していきました。ブランド名のMAI FRIENDSには「マイ(米)フレンズ=お米の友達」という意味が込められていて,米の消費量を増やしたいという目標があるとのことでした。

「クッキーは“どこか知らない国からやってきた食べ物”というコンセプトで作っています。少量でも栄養価が高い商品です。ふりかけのパッケージデザインは派手すぎず,信頼性の高さを表現していて,容器や量も工夫しています。実は,ふりかけを作るのって難しいんですよ。味が均一になるように,重さの違う材料をまんべんなく混ざるようにするのがすごく大変で…。(笑)」

MAI FRIENDSのブランドサイト

MAI FRIENDSの商品は,デザインセミナー(センター主催/講師 髙橋氏)の受講生が企画しているマルシェで定期的に販売しています。

届いて嬉しい“ふるさと納税返礼”

同氏は,宮城県庁・センターのコーディネートで,ふるさと納税返礼品のギフトボックスやリーフレットのデザインにも取り組みました。「宮城のおいしい伊達な時間」をキーワードに,障害者就労支援施設で作られた美味しい商品がつまった返礼品です。

「ギフトボックスやリーフレットの両面にそれぞれ別な絵柄が描かれていて,ひとつはお茶会を楽しむ様子,もうひとつは晩酌を楽しむ様子を表現しています。昼も夜も楽しめる返礼品です。」

髙橋氏が手掛けたギフトボックス。
商品説明のためのリーフレット。

センターや県内企業に期待すること

最後に,センターや県内企業に期待することについてお伺いしました。

「県の機関に,ビジネス感覚を持った職員がもっと増えると良いですね。」

宮城県の地域活性化に関するプロポーザル事業にも参加している同氏ですが,民間企業と行政機関で仕事の仕方やスピード感が違うことがあり,戸惑ってしまうことも多くあったようです。地域で「デザイン」を上手く活用するためにも,民間企業と行政機関が互いの能力を十分に発揮しあえる場を積極的に作っていく必要があるのかもしれません。

「 自分たちの企業が“こうなりたい”というビジョンと未来のゴール設定をしっかりと持つことが重要です。それは,“私たちは〇〇○〇〇○を提供します!”とはっきり言えるような企業の約束事のことです。」

地域の歴史ある企業こそ,明確な目標を設定することの重要性をアドバイスしてくれました。今後も,地域企業+ブルーファーム+行政機関の連携で,多くの商品やサービスが生まれていくことがとても楽しみです。

ローカルイノベーションスクール前で撮影。

会社概要

所在地〒989-6446 宮城県大崎市岩出山大学町144-10
電話0229-25-5442
ウェブサイトhttps://bluefarm.co.jp/
役員代表取締役 早坂正年
主な事業広告制作に関連する業務,コンサルタント企画,動画制作,キャンペーン 店舗・施設リノベーションプランニング・設計 他