材料設計シミュレーションに関する調査(高機能環境適応型の新規選択脱臭技術の基礎研究)

更新日: 2021年7月29日
 

<研究事業名> 新素材応用研究開発事業

<研究テーマ> 材料設計シミュレーションに関する調査(高機能環境適応型の新規選択脱臭技術の基礎研究)

<担当者名> 丸山昇,有住和彦,水上浩一,曽根宏

<目的>
 食材の付加価値創出は各方面で行われているが,臭い処理の問題は将来にわたって残ると予想される。本研究は10〜15年先の実用化を目指し,食材の高付加価値化のキーテクノロジーと考えられる臭い・香りの制御について先行的に調査研究を行うことを目的とする。

<内容および結果>

1 概要
 環境生活・嗜好性分野での宮城県食材・食品産業の優位性を確保するという観点から,食材の高付加価値化のキーテクノロジーと考えられる臭い・香りの選択的制御技術について,文献やインターネット及び各種展示会への参加による情報収集や,特許調査・企業訪問調査を通じて検討を行い,機能性分離膜やパルスレーザーによる特定分子破壊技術等の新技術の適用可能性と今後の研究開発の方向性を探った。

2 結果
 水産加工,畜肉加工,空調,香料の各分野で脱臭に関わるニーズ調査を行った。
 水産加工,畜肉加工,空調等の分野では,例えば魚油貯槽,食品生ゴミ処理,畜肉処理場などにおいて脱臭効果の向上について高いニーズがある。
 香料分野においては,香気成分の単一成分を組み合わせて製品にする手法は香料合成に適さないことから,単一スペクトラム抽出へのニーズは少ない。
 反面,分析用途からは,ある特定成分の選択的捕集技術へのニーズは高い。
 現状の香気成分の分離精製技術は蒸留法が主流である。蒸留法はシステムが比較的単純で低コストであること,減圧蒸留では低温で蒸留できるため香気成分の変性等の影響が少ないことなどにメリットがあるが,沸点の近い香気成分同士の分離は困難である。他には,分取クロマト法,超臨界流体抽出法,選択吸着法などが考えられるが,システムの連続性やコスト面で課題がある。
 以上のことから,蒸留法の課題であるところの「類似の沸点を持つ物質同士の分離」をクリアできる方法を見出せれば新たな香気成分分離精製法としての可能性が生まれるものと思われる。
選択的悪臭除去の観点から,機能性分離膜,パルスレーザーによる特定分子破壊技術に関する最近の技術調査を行った。
 分離膜を利用した脱臭技術は既に実用化レベルであり,新規に入り込む余地は少なく,分子レベルでの分離を可能とする分子ふるい膜についても基本的技術は既に明らかにされている。但し,耐久・信頼性の面からは,目詰まり対応技術がネックであり,従来の逆流・風圧洗浄では連続運転が不可能であることから,連続運転を可能とする新しい方法が必要とされている。
 また,臭い分子には一部の官能基が共通であっても,他の部分の長短によって臭いの種類が異なるものが多く存在するため,分子の大小による分離にもう一工夫加える必要がある。
 なお,パルスレーザーに関しては,現状ではその理論の有効性が議論されている段階であり,実用化にはなお時間を要するものと思われる。

3 まとめ
 臭い・香りの選択的制御技術は,分析用途を主目的とし,機能性分離膜の連続運転を可能とする技術開発,及び分子長の違いによる分離技術開発を行う必要がある。