生分解性プラスチックの分解性制御に関する研究

更新日: 2022年3月4日
 

<研究事業名> 新素材応用研究開発事業

<研究テーマ> 生分解性プラスチックの分解性制御に関する研究

<担当者名> 佐藤勲征,赤間鉄宏,矢口仁

<目的> 生分解性プラスチックの環境依存性を把握する。

<内容および結果>

1. 概要
 農業分野での,廃プラスチック排出量の削減と処理作業の省力化のために,土壌被覆材として用いられるフィルムの環境に適応した生分解化が求められている。本研究では,マルチフィルムを製品モチーフとして,生分解性プラスチックの環境依存性を検討した。

2. 結果
 生分解性プラスチックの生分解速度は,単一の温度,土壌水分量の条件下で行う従来の生分解性評価技術では,多様な環境下で使用した場合の分解性の予測が不可能であることから,本研究では温度,土壌水分量等を多元的に設定する,総合的な生分解性評価法を採用している。なお,生分解性プラスチック材料には,農業用マルチフィルムとして,多く使われているポリブチレンサクシネートアジペートを採用した。

2.1. 環境依存性の評価法の開発
 生分解性フィルムの多様な環境での生分解速度を把握するため,分解条件の検討を行い,力学的強度,重量変化を評価することで,温度,土壌水分量等多様な因子の依存性を把握した。これにより,分解速度式を用いた計算が可能となり,従来,生分解評価に要していた時間が3ヶ月分以上大幅に短縮化された。

2.2. 寿命予測型生分解性マルチフィルムの開発
 多元的な環境因子解析により,分解時期を特定したマルチフィルムを提供できる技術が構築された。開発品は,従来用いられていた汎用マルチと同等の伸び特性を維持しつつ,高い引張強さを実現した。
 従来品との比較を以下の表に示す。

表 開発した生分解性マルチフィルムの物性
 
引張強さ/N
切断時伸び/%
従来品
6.0
490
開発品
17.1
480


開発した生分解性マルチフィルムの外観写真