携帯電源の開発 -軟磁性薄膜作製技術の高度化-

更新日: 2022年3月4日
 

<研究事業名> 地域結集型共同研究事業

<研究テーマ> 携帯電源の開発 -軟磁性薄膜作製技術の高度化-

<担当者名> 高田健一,堀豊,古川博道

<目的> 電源モジュールの小型化に不可欠な薄膜磁気デバイスの開発

<内容および結果>

1. 概要
 本研究は,携帯型電子機器用電源モジュール(スイッチング方式DC-DCコンバータ)の小型化実現のために,その主要部品であるインダクタを薄膜化することを目的としている。平成14年度は,以下のサブテーマについて研究を行った。

(1) 超小型インダクタ設計
 硬磁性薄膜と軟磁性薄膜を複合させた磁心を作製し,複合薄膜磁心の特性評価と磁界解析シミュレーションの両面から,インダクタの許容電流を増大させる効果の有無を検討した。

(2) 電源回路試作
 電源回路においては,市販インダクタ搭載時と試作薄膜インダクタ搭載時の動作特性を比較し,携帯電源の目標仕様を実現するために薄膜インダクタに必要な特性を調査した。さらに,スイッチング動作に伴い薄膜インダクタを流れる電流の時間変化を確認するため,電流プローブを用いた測定実験を実施した。

2. 結果

(1) 超小型インダクタ設計
 軟磁性膜と硬磁性膜を多層化した磁気素子用コアを有する平面インダクタの俯瞰図を図1(a)に,その断面図を図1(b)に示す。電磁界シミュレーションによれば,軟磁性体に発生している磁束密度分布は図2に示すようになり,1Aの電流でも磁気飽和を起こしていないことがわかる。これは,配置した磁石から図1(b)の太線で示す矢印方向に磁界がかかっており,この磁界の方向がコイルによる励磁方向と反対方向であるため,その逆バイアス効果により軟磁性体が磁気飽和しにくくなっていることが理解できる。すなわち,軟磁性体に磁石を配置しない平面型インダクタは,電流範囲0〜0.5A程度が正常な使用範囲であるのに対し,軟磁性膜と硬磁性膜を多層化した磁気素子用コアを有する平面インダクタは電流範囲0〜1A程度までの使用が可能であり,電流容量の大幅な増大効果が明らかとなった。

図1:インダクタの構造,図2:軟磁性薄膜の磁束密度分布を示すグラフ

(2) 電源回路試作
携帯電源の最終目標仕様は最大変換効率80%,最大出力0.2Aであるが,試作薄膜インダクタの電源回路搭載時性能評価の結果,現状での最大変換効率は約75%,最大出力は0.18Aであり,目標値に僅かに及ばないことが明らかとなった。さらに,電流プローブによる測定からインダクタを流れる電流のピーク値は,最大負荷時に電源出力電流の数倍となり,目標出力0.2Aの実現には,前述のインダクタの飽和電流容量アップが必要であることが明らかとなった。

※ 本研究の一部は宮城県地域結集型共同研究事業の一環として行ったものである。