平成6年度研究報告抄録

更新日: 2021年11月19日
 

宮城県工業技術センターが平成6年度に実施した研究報告の抄録です。

研削用工具の実用化・製品化

 ダイヤモンド砥石の高精度且つ高能率なツルーイング・ドレッシングを可能にしたカップ形複合研削砥石(WAまたはGCと鋼材を交互に配列したカップ形砥石)を開発し,製品化を図った(特許出願中)。 また,精密切断砥石は,通常リムタイプであるが,リムタイプは,冷却効果が悪く,窒化珪素セラミックスのような硬い材料の切断では,切断熱によりダイヤモンドが摩滅し,切断時に大きな力を要する。そこで,リムタイプの切断砥石に溝を入れたセグメントタイプの切断砥石を試作した。その結果,24溝入れ及び36溝入れ切断砥石においては,リムタイプに比べて,切断抵抗が小,砥石摩耗が小,ワークのソリが小などの良好な切断結果が得られ,実用化を図ることができた。

木質系緩衝材の製造技術の開発

 発泡スチロールに代表されるプラスチック緩衝材の代替としての木質系発泡体の製造技術の調査と地域の発泡スチロール工場に適用し得るプロセスの開発可能性を検討することを目指した。初年度,廃パルプ(KSP)に発泡性フェノール樹脂を加えた低比重ファイバーボードを各種試作し,比重,吸湿性,吸水性,曲げ強度,圧縮強度等の評価を行った。

能動的視覚センシングによる3次元情報の認識とその応用に関する研究

 本研究では,工業製品の自動検査・選別工程で採用されている画像処理技術において特に画像の取得環境に着目し,画像センサの焦点,露出および照明等の検査環境を自動最適化する機構を構築することにより,従来の手法では困難であった複雑な立体形状を備えた製品の自動検査を可能とすることを目的としている。具体的な検査対象は市販のプラスチック射出成形品の容器である。本研究で開発した自動検査システムでは,最初に最適な照明の角度及び強度を自動設定した後,対象の表面上の傷の画像を取得し,レリーフ処理という画像処理手法により傷部分のみを顕在化した。最終的に傷の無い基準検査面の画像と明度ヒストグラム分布の比較を行い,傷部分を抽出して検査の合否を判定した。以上の検査方法により確実に表面傷の検査が行えることが明らかとなった。

高機能マニピュレータの開発

主として高労働負荷・後継者難にあえぐ農作業の省力化・自動化を目的に,農産物を傷つけずに優しくハンドリングする技術の検討を行なった。その機構として,感圧クッション(接触部分にゴム膜の風船を用い,内部空気の圧力変化により接触力をセンシングできるもの)を用いたフィンガ, 超音波センサ(複数個用いることにより対象の空間位置を検出できる)付き受け皿の2つを検討し,その有効性を確かめた。また,潰れやすい部分は直接さわらずに別の部分をハンドリングしなければならない場合もあるとして,対象物に苺を想定し,その「つる」の部分を引っかけてたぐり寄せる機構を試作・検討した。

傾斜化構造を有した無機質/木質系複合材料の開発と評価

昨年度まで実施してきたプレス及びオートクレーブ処理を併用したゼオライト/珪酸カルシウム系コンクリートの傾斜複合建材作製技術を発展させ,中間層に軽量気泡コンクリート(Actoclaved Light-weight Concrete: ALC)を傾斜配合させると共に,泥しょう鋳込み法を応用したプレスレス法ならびにオートクレーブを使用しない大気圧養生法とを組み合わせる事により,吸放湿性や耐火性,材料強度,寸法安定性などの従来の特性に加えてさらに軽量化,断熱性,吸音性などの特性が付与された大型の多機能建材を安価に作製する事が可能となった。

機能性焼結複合材料の開発

  (a) NNS成形プロセスによる焼結複合材料の開発と評価
粉末射出成形プロセス(MIM)によって付加価値の高い焼結材料や焼結複合材料の創製を目的とし,本年度は従来のステンレスの射出成形技術を基に,純チタン,チタン/アルミ(金属間化合物),超合金等の難加工素材への同技術の適用を図るために,プレス成形-焼結というプロセスで焼結方法及びジルコニア/ステンレス混合系複合材料を用い,その焼結挙動について検討を行い,MIMへ応用するための指針を得た。
  (b) 放電プラズマ焼結法による高温度傾斜を付与した焼結複合材料の開発と評価
放電プラズマ焼結(Spark Plasma Sintering: SPS)法を用い,使用する焼結ダイスの肉厚をダイスの上下方向で変えると共に,ダイス外周部に設置した断熱層の巻き方に工夫を加えるなどの手法を用いる事で,1つのダイスの中に高温部と低温部を作り出す事により両者の差が△T=500 ℃以上の高温度落差場を付与できた。これを用いる事により,従来融点や焼結温度の差が大きすぎるために特性向上や新機能の発現が図られる事がわかっていても組み合わせが不可能であった異種材料どうしの接合体を作製する事が可能となった。

微量ヒ素の新分離除去材の開発

 希薄溶液からヒ素を選択的,かつ完全に回収する目的で,沈殿試薬α-メルカプト-N,2-ナフチルアセトアミド(チオナリド)をポリスチレンの多孔性樹脂にコーテングした機能性樹脂を試作した。この樹脂を用いたバッチ処理ではpH付近で10ppm ヒ素(III)を50ppb に減少することができた。また,カラム処理では,1ppm ヒ素(III)を完全にほ集した。この場合の溶出液のヒ素の濃度は1ppb 以下であった。樹脂にほ集されたヒ素は炭酸水素ナトリウムを添加したよう素溶液またはpH10以上の過酸化水素水などの酸化剤の使用で脱着可能であった。また,ヒ素(V)は全くほ集されなかった。
水酸化鉄による共沈についても比較検討した。

醸造用原料及び前処理工程の検討

 蒸米工程中の蒸気湿り度について検討を行った。実験室スケールの実験では,(1) 蒸気の絞り穴の径,(2) ヒータの出力(火力),等の差異による蒸気湿り度の変化は認められなかったが,蒸し時間が進むにつれて,徐々に蒸気の乾き度 (過熱度)が増していく傾向が見られた。
 次に,県内酒造工場において,蒸米工程中の蒸気湿り度を測定したが,多くの工場において,過熱蒸気による蒸米工程時間が長く(工程前半で過熱蒸気になる工場が多く),湿り蒸気による蒸し時間が短かかった。また,このような工場の多くは,工程終了後の蒸米が硬い傾向にあった。

蒸気爆砕法による海藻バイオマス利用技術の開発

 蒸気爆砕装置を用いて乾燥わかめを粉砕し,その成分の変化を見た。抽出液中では固形分量,糖,タンパク質の増加が見られたが,蒸気釜による処理と比較するとタンパク質の増加が目立った。前処理で適量の水中で膨潤させると成分の増加率は高まり,目的成分の増加のためには同時に加える水の量と時期に最適量があることが示唆された。

狂いにくい,腐りにくい,燃えにくい木の開発

 前年度までの研究結果から木材の三大欠点と言われる狂う,腐る,燃えるという性質が無機質含浸と高温加熱処理との併用により改善できることが判明したが,本年度はこれらの機能性を活かした製品試作を第一の目的とした。なお,無機質含浸にはこれまでの二液拡散法による無機質複合化に代えて,コロイダルシリカ含浸を用いた。本処理法によれば比較的簡単な処理で高い難燃性能 (難燃2級)が得られることに着目したからである。今回,試作品目には木製ブラインド,木製パネルヒーター,木製灰皿の3点を選定し,それぞれの試作ならびに評価を行った。

県産豚骨の食品素材化,及びその最適飼料の探索 -県産豚骨の食品素材化研究 -

豚枝肉より産生する豚骨は栄養素の宝庫であり,食品素材とすべく研究開発を行った。初年度は豚骨の基本成分の分析を行ったところ,ビタミン・ミネラル等の有効成分をみとめた。これを受け本年度は豚骨粉の消化・吸収に関する動物実験,豚骨を利用した食品を検討した。その結果,豚骨粉は他のカルシウム剤と比較し遜色のない消化・吸収を示した。食品素材としては色,におい等の問題を残す結果となった。

新形質米の高度利用化の研究

新形質米は,従来の米とは異なる性質を持ち,多種な米料理や加工食品に利用できるものと考えられている。その中の,高アミロース米の用途拡大の検討を行い,今回はその麺状化を試みた。米の麺化には加熱操作の必要があるものと考え,エクストルーダを使用した。その結果,温度傾斜等により麺状化は可能であった。食感は,市販麺より多少粘りを有した。乾燥による保存性も良好であった。 一方,宮城県産紫黒米は小粒で,県産飯米に比べると白米の吸水性がやや高めであるが,成分的には米中の糖分が多く,粗タンパク質が少ない傾向にあった。また紫黒米を用いて麹を製造したが,一般に用いられている酒米と同程度の酵素力が得られ,吸水性の問題を解決できれば,充分に清酒様アルコール飲料の原料となりうると思われた。

魚介類由来の酵素利用技術の開発

廃棄物となっている魚介類の内臓部分に含まれる,タンパク質分解酵素を含む調味料の開発を目的として,サンマの内臓部分からタンパク質分解酵素を各種クロマトグラフィーにより精製し,性質検討を行った。また,この酵素活性を含んだ加工食品の試作を行った。以上の結果を踏まえ,今後原料魚種の拡大,殺菌・静菌手法の検討を行う必要がある。(1995.9.28公開開始)

凍結濃縮法による県産資源からの機能性食品の開発

 食品の加工法の一つに凍結濃縮法があるが,これに強力な氷核剤として知られる氷核細菌を用いて緩和な条件下で濃縮操作を行い,食品素材の開発の検討を行った。 シランおよびセルロースフォーム等の担体に,回収し再度使用できるように,氷核細菌を培養結合させ,牛乳等の素材に凍結濃縮操作を試みた。 その結果,比表面積の小さい氷片を作り,濃縮に適当な菌体量は,牛乳1リットルに対して滞留時間を20分とすると,8μg/ml程度であると推定された。また,攪拌操作は規則的なものでなく,無秩序なものが効果的であった。シラン担体などの耐久度は,粒径の大きいものが良好であった。

難削材料の三次元加工に関する研究

 グラインディングセンタによるセラミックスの平面,溝,ねじ形状加工を対象とし,加工条件の最適化を行った。正面研削における加工形状は工作物送り方向にダレた形状となり,その大きさは砥石切り込み量と送り速度に大きく影響されるが,スパークアウトを行うことにより大幅に向上する。加工後の変形量は工作物の厚み,研削抵抗の大きさ,表裏面の加工方向の相違に大きく影響されるが,表裏面加工時の砥石の切れ味と加工方向を揃えることにより大幅に減少する。

大豆脱皮かすの利用とその味噌製造への応用

大豆種皮の利用と,この種皮の分解物を用いた味噌の着色コントロールを目的として,大豆種皮を酵素処理して低分子化した。ペーパークロマトグラフィーにより分解物にはヘミセルロースに由来すると思われる五炭糖が含まれていた。また,着色のモデルとして五炭糖と六炭糖による着色の差を測定した。今後はモデル系のスケールアップと実用化への検討を行う必要がある。

プラスチックを用いた複合材料の開発に関する研究

コンクリート管の化学腐食による劣化問題が顕在化している。本研究ではコンクリート管の遠心成形時に,粗骨材として適度に粉砕された廃プラスチックス及び結合材としての自硬性樹脂スラリーを混入することで,軽くて耐食性に富んだコンクリート管の製造方法の確立を目指した。初年度,エポキシ系,SBR系,アクリル系樹脂を自硬性樹脂として選定したときの廃プラスチック混入コンクリート管を作製し,圧縮強度,各種溶剤に対する耐蝕性を評価した。

微生物による水産資源の高度利用化の研究

 これまでの検討で,酢酸ナトリウムあるいはMcIlvaine緩衝液中で酵素を作用させることで真タラ中落ち肉の剥離性が良好なことは判明したが,酵素作用のための処理時間が長くなるに従い,目視的に処理魚肉の状貌は劣化してくる。そこで物理的処理として圧縮空気の風圧を併用して剥離を行い,中落ち剥離肉を得,この剥離肉を微生物由来の増粘多糖類を用いてブロック化することができた。今後は剥離の詳細な条件及び適度な強度を持ったブロック化条件の検討が必要である。

魚体頭部脂質の加工 -水産物の脳内高度不飽和脂肪酸の高度利用-

 マグロ眼か部の抽出油にリパーゼを作用させて得たドコサヘキエン酸(DHA)50%濃縮油の酸化安定性について検討した。抽出油のみではもとの眼か油よりもむしろ酸化安定性は向上した。蒲鉾やペットフードにDHA濃縮油を添加し保存実験を行ったところもとの眼か油と酸化速度は変わらず,DHA強化食品を作るにあたり濃縮油添加で脂質添加量を下げられる上,酸化安定性も従来と変わらないことが示唆され た。