プラスチックの試作と評価

更新日: 2022年3月4日
 

プラスチックの試作と評価について

プラスチック加工分野において,宮城県産業技術総合センターで実施可能な内容の一例

項目内容装置
材料試作複数のプラスチックペレット等の混練極少容量ニーダー少容量ニーダー小型押出機高分子材料コンパウンド装置
材料成形作製した材料の試験片等への成形射出成形機,打ち抜き金型
物性評価機械的物性(引張・曲げ強度,クリープ強度)流動性評価水分量評価 等高速引張圧縮試験機クリープ試験機メルトインデックサ,スパイラルフロー金型 等

高分子材料の試作

混練の流れ
数種類のプラスチックペレットやゴム,各種フィラー,添加剤等を混練し,新しい高分子複合材料の試作が可能です。
(※プラスチックは熱可塑性樹脂)

材料の選択

目的とする機能に応じて,混ぜる材料を選びます。

  • 物性の改善
    • 繊維状の充填材(カーボン,アラミド,ガラス繊維等)
      →機械的強度や靱性,耐熱性の改善
    • 異なる種類のプラスチックやエラストマー
      →各成分の有効特性の取り込み
  • 新機能の発現
    • バイオマス原料(澱粉,セルロース繊維等)
      →生分解性,化石資源使用率の低減
    • 各種添加剤
      →各添加剤がもたらす効果の発現

※当センター保有の混練装置は鉄系素材でできており,これらを侵食(腐食・摩耗)する材料は混練できません。

※装置の設置室は一般的な実験室で、特殊な換気設備等はありません。粉塵やガスが発生する材料は混練できません。

※材料混練の際には、使用を希望する全ての素材(添加剤等も含む)について、安全な取扱い範囲が確認できる資料(SDS・メーカーが発行する物性情報等)を担当宛提出してください。

装置の選択

材料を混練する装置はバッチ式のニーダーと連続式の押出機が2台ずつあります。

ニーダー(バッチ式混練機)

外観仕様利用実例
極少容量ニーダー
レオミックス600p
●混練量:50cm³程度温度
●設定温度:室温〜300℃
●トルク:0〜120Nm程度
●ロータ回転数,材料温度のログ可能
●加工後の材料形状:溶融状態の樹脂をヘラで掻き取るため不定形
●少量多品種の試作に最適
●フィラーや機能性添加剤の効果・必要量の確認
●樹脂の相溶性やフィラーの表面処理効果の確認
●検量線用サンプルの作製
●射出成形用マスターバッチの作製
少容量ニーダー
DRV3-10GB-E
●混練量:2.4L程度温度
●設定温度:室温〜300℃
●ロータ最高回転数:約40rpm
●加工後の材料形状:溶融状態の樹脂をヘラで掻き取るため不定形
●極少容量ニーダーのスケールアップ
●押出機では混練できない高充填フィラー系にも適用可能

押出機(連続式混練機)

外観仕様利用実例
小型押出機
レオメックスPTW25p
●同方向回転二軸混練押出機
●吐出量:2〜3Kg/h
●スクリュ径:24mm,L/D:28
●温度:室温〜300℃
●ダイス:ストランドダイ,Tダイ
●材料形状:ペレット,シート
●連続式混練機でのシート作製
高分子材料コンパウンド装置
TEM-26SX
●同方向回転二軸混練押出機
●吐出量:5Kg/h〜
●スクリュ径:26mm,L/D:48
●温度:室温〜350℃
●ダイス:ストランドダイ(2穴)
●スクリュ最高回転数:1100rpm
●最高トルク:250Nm
●材料形状:ペレット
●10Kg単位以上のペレット作製に最適
●強い練りが必要なもの(強混練用スクリュと弱混練用スクリュを付属)

高分子材料の成形

ペレットや塊となっている高分子材料の成形が可能です。
作製した材料の物性評価を行う場合は,所定の試験片に加工します。
成形の流れ

物性評価

試作した材料が目的とする機能を具備しているかどうか,確認します。
当センターでは様々な試験が可能ですが,よくお問い合わせのある試験項目を御紹介します。

引張・曲げ強度

引張強度,曲げ強度,引張弾性率及び曲げ弾性率の試験が可能です。

装置名称最大荷重試験速度温度
引張圧縮試験機
(ストログラフ)
10kN0.5〜500mm/min-50〜200℃
高速引張圧縮試験機20kN0.5〜4000mm/min-40〜300℃

A1号型ダンベル試験片を使用しますが,製品形状での測定も可能です。
測定の目的に応じて,供試体の姿勢保持方法や負荷の方向,部位等の検討が必要です。
さらに荷重の大きい試験機もございますので,詳細はお問い合わせください。

クリープ強度

製品使用温度によっては,常温における破断強さ未満の負荷を継続して与えた際に,材料が徐々に変形して破断に至る現象(クリープ)を検討する必要があります。

クリープ試験機
(マイズ試験機,No.525-L)
クリープ試験機の外観
●ロードセル式(500N,5kN)
●6連の治具にそれぞれ異なる荷重を自由にかけることが可能
●治具は引張,曲げ,圧縮の3種類

流動性

成形材料として使用する際の流動性の確認が可能です。

メルトインデックサ
メルトフローレート(MFR)測定
メルトインデックサの外観
任意の温度と一定荷重負荷のもと,シリンダ先端の細いダイスから押し出した樹脂の10分あたりの吐出量[g]で確認
→数字が大きいほど流れ性が良い材料

メルトインデックサが樹脂に与える剪断速度は,混練押出・押出成形における剪断速度領域と合致するので,押出成形における流動性の確認に最適です。
また,射出成形における流動性についても,剪断速度領域は異なるものの,概ね比較可能なデータが取得できます。 このため,流動性に端を発して成形不良が発生したと考えられる場合に,状況確認のために使用することもあります。
スパイラルフロー試験
スパイラルフロー金型の外観
射出成形における材料の流動性を,実際に射出成形を行うことで確認する手法

渦巻き(スパイラル)状の金型を用い,任意の成形条件下の充填距離で流動性の良し悪しを判断します。 但し,充填距離そのものに絶対値や物性値のような意味はなく,グレードの近い成形材料(従来材と新規材,OK材とNG材等)と比較する形で利用します。

この他,熱物性測定や電子顕微鏡による観察も可能ですので,詳細はお問い合わせください。